知って得する相続・税コラム「不動産投資を成功に導く節税とリスク回避」 5回目

第5回目のお話は、相続税対策の視点による不動産投資の注意点です。

今まで、不動産投資をするなら、法人所有がベストであるとお話しました。

 

しかし、相続税対策を重点とするのであれば、少し事情が異なります。

具体的な事例により検討しましょう。

 

本人所有の土地(相続税評価1億円)に1億円の賃貸アパートを1億円借金して建設します。

この時、法人名義の場合と個人名義の場合の相続税評価について、比較します。

 

 

「本人(個人)名義による相続税評価額」

 

土地:1億円×(1-0.5×0.3)=85,000千円

解説:相続税の貸家建付地評価計算は、自用地としての評価額から自用地としての評価額×借地権割合×借家権割合(現在は30%)を控除した金額になります。借地権50%地域であると想定した場合、15%の減額になります。

 

建物:50,000千円×(1-0.3)=35,000千円

解説:相続税の建物評価計算は、建物固定資産評価額から建物固定資産評価額×借家権(借家権割合は30%)を控除した金額になります。

また、通常、1億円で建設した直後の固定資産評価額は、おおよそ半分程度になります。

 

債務:1億円(建設直後)

 

相続財産:土地(85,000千円)+建物(35,000千円)-1億円(借入金)=20,000千円

となります。

 

 

「法人名義による場合の相続税評価額」

 

土地:1億円×(1-0.2)=80,000千円

解説:一定の条件は必要ですが、20%の貸地減額になります。

 

相続財産:土地(85,000千円)のみ。

 

 

上記の事例より、相続税による財産評価は、個人名義による建物取得の方が圧倒的に低くなります。

当然、個人名義による相続税の節税を図ることができます。

 

もちろん、長期的なスパンで考えれば、上記事例と違った結論になります。

 

ただ、今回、皆さんに理解して欲しい点は一つです。

建物の名義は「何を」重点にするかによって、有利不利が発生するということです。

 

例えば、不動産投資による所得税の軽減を図るのであれば、法人名義の方が有利に働きます。

一方、近い将来の相続税対策を重点に置くのであれば、個人名義の方が有利になります。

 

ぜひ、皆さんは、以上の事をふまえて、慎重に「誰が」建物を取得するのか決定してください。