税務署は見た!

相続税の税務調査があった場合、何が重点的にチェックされるのか?

 

・・・

 

それは「預貯金」です。

 

国税庁が発表している資料によれば、毎年の申告漏れ財産の35~40%程度を「現金・預貯金等」が占めており、毎年の第1位です。

 

ここで、不思議に思われる方がいるかもしれません。

なぜ、預金が漏れるの?銀行の残高証明書通りではないの?

 

この「現金・預貯金等」は亡くなった方の預金残高ではなく、「親族名義の預貯金」を意味します。

 

そして、その多くは生前贈与の方法に問題が潜んでいるのです。

 

生前贈与とは、皆さんよくご存じの110万円の非課税を利用した暦年贈与です。

 

「親族名義の預貯金」とは、「つもり」贈与になっていませんか?ということです。

亡くなった親から子や孫に贈与した「つもり」になっている可能性が多々あります。

 

専門的にいえば、法的には贈与が成立していない行為であると。

 

「つもり」贈与は、預金の名義は子や孫の名義だけど、相続の時に税務署に否認され、亡くなった方の相続財産として加算されます。

 

だから今回は、「生前贈与の注意点」についてお話していきます。

 

 

贈与をする場合において、非常に重要なことは「贈与契約書を作成すること」です。

 

贈与とは民法に定められた行為であり、契約書を作成することは絶対条件ではありません。

 

ただし、何度もいいますが、後日の税務調査でのトラブルを前提にするならば、贈与契約書は作っておくべきです。

 

もう一度いいます。贈与契約書は作るべきです。

 

民法549条(贈与)には

「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」

とあります。

 

この条文は、お互いの意思の表示によって、贈与という法律行為が成立することを意味します。

 

 〇 あげる人(贈与者):贈与をする意思

 

 〇 もらう人(受贈者):贈与を受ける意思

 

の両方があって「初めて」成立するのが贈与なのです。

 

一般的によくあるケースとして、「祖父母が孫名義で預金を積み立てている」という状況です。

 

この場合、法律的贈与は成立していますか?

 

これは、もらう側の孫の意思はなく、あげる側の意思しかないので、アウトです。

 

何度もいいます。お互いの意思の表示とは、「あげます」「もらいます」という行為です。

この行為は口約束で成立します。

 

だけど、第三者(税務署)に証明しようと思えば、口約束では、かなり無理が生じます。

 

贈与契約書を作成しておくことは、もらう側が「贈与を受けることを認めた意思」の立証になるので、重要なのです。

もらう側が成人していれば、あげる側ともらう側で贈与契約書を交わせばOKです。

 

 

では、受贈者が未成年者の場合はどうしたらいいでしょうか?

 

それは親権者が受贈者(未成年者)の法定代理人として、贈与契約書を交わせばいいのです。

 

たとえば、祖父Aから孫B(0歳)に対して贈与をするならば、

 

 〇 あげる側:祖父A(署名、押印)

 

 〇 もらう側:孫B

 

 〇 Bの法定代理人:Bの父(署名、押印)

 

 〇 Bの法定代理人:Bの母(署名、押印)

 

 という形式で贈与契約書を作成すればいいのです

 

受贈者が0歳だったとしても贈与は成立するのです。

 

結果として、受贈者の年齢には関係なく、贈与は成立するのです。

 

だから、みなさんが生前贈与をする、または、受けるならば、これをきちんと立証するために贈与契約書を作成しておくべきなのです。

 

特に、未成年の子や孫に贈与する場合の立証手段は贈与契約書しかありませんので。

 

いかがでしょうか?

 

生前贈与は非常にシンプルであるため、多くの方が行なっていますが、税務調査を前提にすれば、「問題になる可能性が高い贈与」は多数存在します。

 

もし、みなさんが生前贈与をする、または、受けるならば、「非の打ちどころがない贈与」を行いましょう。