遺言書の風景~何でもない遺言書のとんでもない執行報酬~

 

遺言書を作成するなら、誰に依頼しますか?

弁護士ですか?

司法書士ですか?

税理士ですか?

それとも、大手信託銀行ですか?

 

遺言書の作成は、どの専門家に依頼するかによって、遺言書の中身が変わります。

 

今回は、遺言書の中で特に留意してほしい点を紹介します。

それは、遺言書に書かれている「遺言執行報酬の規定」です。

それぞれの専門家によって、同じ財産規模でも、数十万から数千万円まで報酬の開きが出てきます。

 

では、各専門家によって、遺言執行の業務に違いあるかといえば、全く違いはありません。むしろ、同じです。

遺言執行業務の目的は、遺言書に書かれている通りに実行するだけです。

作業の方法やノウハウに違いがあるとしても、遺言書と違う内容で執行することはあり得ません。

 

 

ここで、遺言執行業務の内容を説明します。

基本は亡くなった方の財産の名義変更です。ただ、これだけです。

 

通常、誰にでもできます。

特に難しいことはありません。銀行・証券会社・法務局等に行って手続きをするだけです。

 

果たして、この手続きのためだけに、何百万円、何千万円もの報酬を支払うだけの価値はあるのでしょうか。

 

恐らく、相続人にとって、遺言執行業務は特別な手続きを必要としているものと誤解があるのかもしれません。

 

繰り返しますが、特に特別な手続きはありません。

 

さらに、遺言書を作成する際に、この報酬額を作成する本人が認識していないのも事実です。

 

まず、執行契約が何ページにもわたっており、さらに文字は細かく、執行報酬の規定箇所は、特に複雑になるように規定されています。

単純に何百万円と書かれているわけではなく、財産規模によって少しずつ金額が変わるように、暗算で計算できないように書かれているのです。

 

さらに、本人自身が高齢であるケースが多いため、細かいことに注意が及びません。

 

もう一つ、都市伝説でいわれているのが、「大手信託銀行で作成した遺言書はもめない」ということです。

 

通常、専門家であれば、できる限りもめないように遺言書を作成しますが、もめるときは、誰が作ってももめます。

信託銀行は大手だから大丈夫だ、ということになりません。

 

だから、遺言書を作成する場合、必ず、執行報酬を確認して、その人に執行を任すかどうか判断してください。

既に遺言書を作成している場合は、執行報酬の金額を今一度確認してください。

 

亡くなった後で、相続人は、執行報酬額にビックリします。

 

仮に、本人が亡くなった後に、相続人が高額な執行報酬を知った場合はどうなるのか?

遺言書通り、財産の名義変更を行い、執行人に何百万円、何千万円の執行報酬を支払わないといけないか?

 

原則、遺言書通り執行するのであれば、執行人の解除をしないかぎり、執行報酬は発生します。

特段の事情を除き、執行人の変更は困難です。

 

では、どうするか。

 

方法がないわけでもありません。

一つの方策として、相続人間で協議でまとまるのであれば、遺言執行によらないで、分割協議という方法で財産の分割を行えば、執行報酬は発生いたしません。

 

遺言書によって後々のトラブルが発生しないためにも、しっかりと知識をもっておきたいものです。